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5児の父親・つるの剛士が語る、男性育休の意義とは?「育休は男性の家庭訓練期」

共働き夫婦がスタンダードな価値観となった近年。男性の子育てがまだ珍しかったころから自然体で育児を楽しんできた、つるの剛士さん。50歳という節目を迎え、父親として、一人の人間として、彼が辿り着いた境地とは。

 

<目次>
1.トイレにベビーチェアがない!? 実感する育児環境の変化
2.ベストファーザー賞の授賞式で育休(のようなもの)を取得宣言!
3.育休を経て見えたもの。夫婦で築く、これからの家族のカタチ

 

トイレにベビーチェアがない!?
実感する育児環境の変化

つるのさんの子育ての原点は、2004年に長男が誕生した瞬間に遡る。当時の社会では、父親が積極的に育児に関わることはまだ一般的ではなかった。「デパートのおむつ替えスペースにパパの姿はほぼ皆無。パパは僕以外にいないから逆にちょっとした優越感を感じていました(笑)。普通は恥ずかしがっちゃうところなんでしょうけど、堂々と抱っこひもを身に着けて『自分がパイオニアだ』という気持ちで、楽しみながら育児に参加していましたね」と当時を振り返る。

時代の変化を強く感じたのは、2016年に次男が生まれた時。上の子どもたちが幼かった頃は気づかなかった社会の変化に、時の流れを感じたという。「次男が生まれた頃には、男性トイレにもベビーチェアが設置されていることが増え、社会全体で子育てを応援する空気が少しずつ生まれてきたんだなぁと感じました。授乳室もジェンダーレスなデザインが増え、男性も気兼ねなく利用できるようになったのには嬉しく思いましたね」。

ベストファーザー賞の授賞式で
育休(のようなもの)を取得宣言!

4人目の出産を控えた2009年頃、つるのさんは仕事でほぼ家におらず、奥さんは3人の子どもの世話に追われ疲弊していた。夫婦の会話もなくなり空気はどんより。ある時には、些細なことで夫婦喧嘩に発展し、消臭剤のボトルが飛んでくるほど。家庭が混乱していると強く感じ、「このままでは妻にフラれてしまう!」と危機感を抱いた。そんななか、「家庭という基盤をしっかり作らないと、仕事もうまくいかない」という実父の言葉を思い出し、つるのさんは、ベストファーザー賞の授賞式で、誰にも相談することなく育休(のようなもの)を取得することを宣言した。「事務所には本当に申し訳ないことをしました……」と、苦笑いを浮かべる。

事情を知った事務所も快く承諾し、ついに育休に突入。「まず、何をすれば良いのかわからず、途方に暮れてしまいました」と苦笑する。「子どものオムツを替えるのも、ミルクを作るのも初めて。妻に教えてもらいながら、一つ一つ覚えていきました」。最初の1週間は全てが新鮮で楽しかったものの、子どもたちの送迎、お弁当作り、掃除、洗濯と、毎日の同じことの繰り返しで、次第に虚しさを感じ始めた。「仕事なら、評価や対価がある。でも、家事はどんなに頑張っても評価も感謝もない。そこで初めて、妻や世のママたちのモヤモヤに気付いたんです。それからは、積極的に妻に「ありがとう」と感謝の言葉を伝え、家事の工夫や苦労を共有し合うようになりました」。その後、5人目の誕生を機に2回目の育休を取得。2度の育休を経て、一番良かったと思ったのは、奥さんの苦労をちゃんと理解できるようになったことだという。「家事・育児の大変さを分かっていないと、『言ってもわからないし』って諦められてしまうかもしれない。家庭内に理解者がいるのはとても心強いことです」。

令和6年度の男性育休取得率は過去最高の40.5%※。一方で「取るだけ育休」など新たな問題も生まれている。つるのさんは、育児休業の男性への普及を喜びつつも、義務的な風潮になっていることを懸念する。「僕はずっと育休とは男性の『家庭訓練期』だと言い続けています。『休暇』って言葉を使うから勘違いしちゃいますが、家事・育児のスキルを身に着ける修行の時間です。何をすればわからないという声も耳にしますが、答えは“全部”やる。なので、これから育休を取るパパたちは、『全部僕がやるから、わからないことは教えて』と、ママにお願いしておきましょう。はじめはわからないことばかりで喧嘩も多いでしょうが、この訓練を乗り越えた先には、夫婦としての信頼関係が築けているはずです」。

※厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」

育休を経て見えたもの。
夫婦で築く、これからの家族のカタチ

子どもたちと真摯に向き合った日々は、人生にも大きな影響を与えた。「保育士免許を取ったり、大学に入って心理学を勉強したり、新しいことに挑戦しようと思ったのも、全て、子育てがきっかけ。子どもって、今まで知らなかった世界を見せてくれる。本当に素晴らしい存在ですよね」と笑顔を見せる。

育児における夫婦の役割分担について「時間の割合でいったら、育児にかけている時間は奥さんのほうが圧倒的に多いです。そこはもう、敵わないと思っています」と正直に語る。「でも、僕が家にいないときや、逆にママが家にいないときに、どうすれば子どもたちが『パパ感』や『ママ感』を感じられるかは、とても大事なことだと思っています」。それは、単に代わりを務めるのではなく、それぞれの親が持つ個性や愛情の形を子供たちが感じられるようにすることだ。例えば、つるのさんが育休中に毎朝娘たちの髪を結ってあげていたように、それぞれの親が得意とするスキンシップを大切にする。そうすることで、片方の親が不在でも子どもたちは安心感を得られ、愛情を感じられるのだ。

インタビューの最後に、つるのさんは長男が成人し、共に盃を交わした時の感動を語ってくれた。「息子が二十歳になった時、二人でお酒を飲みに出かけたんです。僕が釣った魚を知り合いのお店で捌いてもらって、それを肴に初飲みしました。そう言うとかっこよく聞こえるけど、実は30年前に全く同じことを僕の父にもやってもらったんです(笑)。今は、子育てで一番大変な時期は過ぎましたが、これから子どもたちがどんな大人になっていくのか、本当に楽しみです」。わが子たちたちとしっかりと向き合ってきたからこそ強く結ばれた親子の絆。つるのさんの楽しい子育てライフはまだまだ続いていくようだ。

PROFILE

つるの 剛士
TAKESHI TSURUNO

1997年、特撮ドラマ『ウルトラマンダイナ』でアスカ隊員役を好演。2008年にはバラエティ番組『クイズヘキサゴン』で結成されたユニット“羞恥心”でブレイク。私生活では2男3女の父として、2度の男性育休を取得。2009年にベストファーザー賞を受賞。2022年に幼稚園教諭二種免許と保育士資格を取得。2025年には東京未来大学こども心理学部を卒業し、認定心理士資格取得に必要な単位を修了。非常勤の幼稚園教諭としても活動している。つるのさんがイラストも手掛ける最新著書『「心はかけても手はかけず」つるの家伝統・見守り育児つるのの恩返し』(講談社)が発売中。

カーディガン112,200円(ジョルジオ ブラート/コロネット TEL:03-5216-6524)、ネックレス178,200円(シンパシー オブ ソウル/S.O.Sfp 恵比寿本店 TEL:03-3461-4875)、その他はスタイリスト私物


文:竹治昭宏
写真:松尾夏樹 
スタイリング:浅井秀規
ヘア&メイク:松本恵

FQ JAPAN VOL.76(2025年秋号)より転載

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