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【コラム】夫婦の「わかってほしい!」がぶつかる前に。「共感ファースト」と労いでつくる夫婦の土台【第2回】

解決の第一歩。何よりも先に耳を傾ける
「共感ファースト」

この「わかってほしい!」のせめぎ合いから抜け出し、風通しの良いチームに戻るために最も効果的な処方箋が、「共感ファースト」のアプローチです。

多くの人が誤解しがちですが、アドラー心理学において、「共感」と「同意」は明確に異なります。

•共感:相手の意見に賛同するかどうかは一旦横に置き、「相手の目で見て、相手の耳で聴き、相手の心で感じること(相手の関心に関心を持つこと)」。

•同意:相手の意見や主張、要求に対して「その通りだ」と全面的に賛同・服従すること。

パートナーから苛立ちや不満を投げかけられたとき、私たちはつい「でも、こっちだって……」と言い訳(自己防衛)を挟んだり、「そんな言い方しなくてもいいだろう」と正論で反論したくなります。しかし、火に油を注ぐような反論をぐっとこらえ、まずは相手の感情の背景にピントを合わせるのです。
 

「2学期が始まって、書類や持ち物の準備で本当にバタバタだったんだね。焦っちゃうよね」
「朝から急ぎの仕事メールが入って、気を張っていたんだね。お疲れさま」

 

相手の言い分にすべて同意する必要はありません。「相手が今、そのように感じて切羽詰まっている」という事実をありのまま受け止める(共感する)だけで、相手の心にたまっていたネガティブな感情のコップは溢れ出さずに落ち着きを取り戻します。

相手の「わかってほしい」が満たされて初めて、人はこちらの言葉に耳を傾ける心のスペースを持てるようになるのです。
 

当たり前の日常を奇跡と捉える
「感謝(有り難い)」と丁寧な労い

共感ファーストと並んで、夫婦の土台を強固にするのが「感謝と労い」の習慣です。

関係がギスギスしている夫婦の間では、しばしば「減点主義(ダメ出し)」が横行しています。「やってくれて当たり前」「できていないところを探して指摘する」という姿勢です。

しかし、毎朝起きて子どもたちを元気に送り出すこと、仕事に向かい家族の生活を支えること、食事を作ること、ゴミを捨てること――。これらは本当に「当たり前」のことでしょうか?

「ありがとう」という言葉の語源は、「有ることが難しい」、すなわち「有り難い(奇跡のようなこと)」です。

アドラー心理学をベースにした組織づくりでも、人のエンゲージメント(貢献意欲)や心理的安全性を高める最大の源泉は「存在承認」と「行動承認」にあると考えます。

「完璧な成果」を出したときだけ上から目線で褒めるのではなく、日々のプロセスや、そこに存在してくれていること自体に光を当てるのです。
 

「今日も朝早くから子どもたちの準備をしてくれて助かったよ、ありがとう」
「いつも家族のために仕事を頑張ってくれて感謝してるよ」

 

照れくさいかもしれませんが、こうした丁寧な労いの言葉を日常的に交わし合える関係こそが、違いを認め合える対等な「ヨコの関係(相互尊敬・相互信頼)」の土台を作ります。

夫婦が『ごきげん』でいられるかどうかは、特別な才能や劇的な出来事によるものではありません。日常のほんの些細な場面で、相手の「わかってほしい」を先に受け止める勇気と、当たり前の日常に「ありがとう」を口にする丁寧さの積み重ねによって決まるのです。
 

次回は「夫婦は“同じ考え”じゃなくていい!」

今回は、コミュニケーションの土台となる「共感ファースト」と「労い」の大切さをお伝えしました。

とはいえ、読者の皆さんの中には、こんな疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。

「共感の大切さは分かった。でも、子どもの進路やお金の使い方、家事の分担方針など、相手の考え方そのものにどうしても納得・同意できないときはどうすればいいの?」

「意見が合わない私たちは、夫婦としてチーム失格なの?」

決してそんなことはありません! アドラー心理学では、意見の一致(同質性)をチームのゴールとは考えません(その代わりに、目標の一致は大切にします)。同意できなくても関係を決裂させる必要はなく、むしろ「考え方が違うからこそ、補い合える最強のチーム」へと進化させることができるのです。

次回(10月号)は、「夫婦は“同じ考え”じゃなくていい!」をテーマに、お互いの違いを歓迎し、役割を美しく補完し合うチーム・マネジメントの極意についてお届けします。どうぞお楽しみに!


文:熊野 英一

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