【コラム】夫婦は「同じ考え」じゃなくていい!――登るルートが違っても山頂が同じなら 、最強のチームになれる【第3回】
2026.10.24
VUCA・BANI時代に「同質チーム」は生き残れない
この「考え方は違っていい。目標を一致させよ」という鉄則は、実は夫婦関係に限った話ではありません。ビジネスの組織マネジメントでも、子どもとの関わりでも、親世代との対話でも、あらゆる人間関係において幸せな結果を導き出す「鉄板の法則」です。
いま、ビジネス界では「ダイバーシティ(多様性)」の重要性が盛んに叫ばれています。なぜこれほど多様性が求められているのでしょうか? 単なるお題目やポリティカル・コレクトネス(言葉の配慮)ではありません。
現代の社会環境は、先行きが不透明で変化が激しい「VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)」、さらには「BANI(脆弱性・不安・非線形性・不可解さ)」の時代と呼ばれています。 過去の成功体験が一切通用しない混沌とした時代において、「同じような属性、同じような思考パターンの人ばかりが集まった同質チーム」は、ひとたび想定外の危機に直面すると脆くも崩壊してしまいます。
多様性とは、「違うから衝突する」のではなく「違うからこそ補い合える、強いチームをつくるための合理的・建設的な戦略」なのです。
家庭という最小単位のチームも全く同じです。 夫婦ふたりが全く同じ性格で、同じ強みと弱みを持っていたらどうなるでしょうか? ふたりとも超楽観的で大雑把なら、家計や教育のリスク管理がおろそかになるかもしれません。逆にふたりとも超慎重派でリスクを極度に恐れるタイプなら、新しい住まいや子どもの挑戦に対して一歩も前に踏み出せなくなるでしょう。
慎重に計画を練るパートナーがいるからこそ、落とし穴を避けられる。
直感でスピーディーに動くパートナーがいるからこそ、新しいチャンスを掴める。
料理に例えるなら、同じ具材ばかりが入った鍋よりも、お肉、野菜、きのこ、様々な出汁が調和した鍋のほうが圧倒的に味わい深く「美味しい」のと同じです。 自分とパートナーの違いは、ストレスの種ではなく、家庭というチームの「最大の資産」なのです。
「共同体感覚」と、「急がば回れ」のチームづくり

お互いの価値観をリスペクトしつつ、自分の価値観も大切にする。 アドラー心理学では、このあり方を「共同体感覚」と呼びます。自分を犠牲にして相手に合わせるのでもなく(自己犠牲の否定)、相手を力でねじ伏せて従わせるのでもない(他者支配の否定)。不完全な自分をそのまま受け入れ(自己受容)、相手を無条件に信じ(他者信頼)、チーム全体の幸せのために貢献し合う(他者貢献)姿勢です。
忙しい毎日を送っていると、私たちはつい「手っ取り早く」物事を進めたくなります。
「議論する時間がもったいないから、私の言う通りにしてよ」
「同じ考えの人だけでパパッと決めてしまった方が早いのに」
そう思ってしまう気持ちもよく分かります。
しかし、目先のスピードを優先して対話を省き、どちらかが不満や我慢を抱えたまま進めた計画は、後から必ず「なんであの時……」という不機嫌や手戻りとなって爆発します。「急がば回れ」です。 考え方が違うふたりだからこそ、まずはコミュニケーションにしっかりと時間を投資する。
「私たちは、そもそも何のためにこのイベントをやるんだっけ?(WHAT/目的)」
「家族みんなにとって、どんな状態が一番幸せかな?」
この「目的のすり合わせ」という土台を丁寧に築き上げることさえできれば、驚くべきことに、その後の具体的な段取りや役割分担はサクサクと効果的・効率的に回り始めます。 違いを歓迎し、対話を楽しむこと。そのための強力なツールとして、アドラー心理学の知恵は日々の暮らしの中で何度でも活用できるのです。年末年始に向けて、ぜひパートナーと「我が家の目指す山頂」について、温かいコーヒーでも飲みながら語り合ってみてください。
次回(11月号)予告:11月22日「いい夫婦の日」特別企画!
今回は、「夫婦は同じ考えじゃなくていい」「目標の一致と役割の補完」についてお届けしました。
そして次回は、連載の大きな山場を迎えます! 毎月24日公開のところ、次回はあえて11月22日「いい夫婦の日」に合わせて特別公開いたします!テーマは、『“いい夫婦”の答え合わせ』。 本連載の編集担当・岡本さんをはじめとするParents Well-Being編集部メンバーをお招きし、熊野英一×編集部の「スペシャル鼎談企画」をお届けします!
「“いい夫婦”って、具体的にどんな状態のこと?」
パートナーの悩みや問題に、どこまで踏み込んで、どこから任せるべき?
「おせっかい」と「見守る」の境界線とは?
現場で日々奮闘するリアルな親世代・編集部の生の疑問をぶつけていただきながら、アドラー心理学の真骨頂である「課題の分離」と「共同の課題」の真髄に迫ります。どうぞお楽しみに!
文/熊野 英一
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