【コラム】夫婦は「同じ考え」じゃなくていい!――登るルートが違っても山頂が同じなら 、最強のチームになれる【第3回】
2026.10.24
ハロウィンが過ぎれば、もう世間は年末ムード。この時期は年末年始のイベントや過ごし方で、夫婦間にすれ違いが起こってしまうケースも少なくないようです。今回も前回に続き、そんな夫婦のすれ違いを原因から分析、解説していきます。
熊野 英一

「相互尊敬・相互信頼」のコミュニケーションを伝える勇気づけのプロ。1972年パリ生まれ。早稲田大学卒業後、メルセデス・ベンツ日本、米国MBA取得、イーライリリーを経て保育業界へ。約60箇所の施設運営を経て株式会社子育て支援を設立。日本アドラー心理学会正会員、日本個人心理学会理事。著書に『1日1分アドラー 悩みがゼロになる心の処方箋72の言葉』『夫婦の教科書』など8冊。不登校支援「ビリーバーズ」運営等多角的に活動中。
ハロウィンが過ぎると一気に加速する
「年末モード」
10月も下旬を迎え、街はすっかり秋色に染まってきました。ハロウィンが終わると、街のディスプレイや音楽は一気にクリスマス、そして年末年始のムードへと舵を切ります。カレンダーを見ながら「今年もあと2ヶ月ちょっとか……」と、時の流れの早さに驚いている方も多いのではないでしょうか。この時期になると、どの家庭でも増えてくるのが「年末年始の家族イベント」のすり合わせです。

「今年の年末年始は、実家に帰省する? それとも家族で旅行に行く?」
「子どもの冬休み、スキーや体験教室に行かせてあげたいけれど、予算はどうする?」
家族みんなが笑顔で過ごすための計画のはずなのに、話し合っているうちにいつの間にか雲行きが怪しくなり、 「せっかくの休みなんだから、たまには家でゆっくり休ませてよ!」 「親に孫の顔を見せるのが先でしょ? あなたは家族の義務をどう考えているの!?」 といった意見の対立が勃発してしまう……。
イベント本番を迎える前に家庭内がピリピリとした冷戦状態になり、せっかくのホリデーシーズンが台無しになってしまった苦い経験、皆さんにも一度や二度はあるのではないでしょうか?
前回の振り返りと
「意見が合わないとき」の壁
前回の第2回コラムでは、コミュニケーションの根底には常に「私の頑張りをわかってほしい!」という叫びの衝突があること、そしてそのせめぎ合いを手放すための「共感ファースト(共感と同意は違う)」と「日々の労い・感謝」についてお伝えしました。
記事を読んで「まずは相手の言い分に耳を傾けてみよう」と実践してくださった読者の方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、ここで必ずといっていいほど、次の大きな壁にぶつかります。
「相手の気持ちに共感しようと努めてはみたけれど、子どもの教育方針やお金の使い方、休暇の過ごし方など、相手の意見そのものにはどうしても納得・同意できない!」
「意見が真っ向から対立してしまう私たちは、夫婦として相性が悪いのだろうか? チーム失格なのだろうか?」
そんなモヤモヤを抱えている方に、アドラー心理学の観点から力強くお伝えしたいメッセージがあります。
「夫婦は、“同じ考え”じゃなくていいんです」
むしろ、最初から同じ考えである必要など、まったくありません。
意見の一致(同質性)を手放し、
「目標の一致」を握り合う

私たちが夫婦関係で衝突し、「ふきげん」に陥ってしまう最大の原因は、「チームである以上、考え方や価値観も同じでなければならない(=意見の一致)」という思い込みにあります。自分の意見とパートナーの意見が異なると、「どちらが正しいか」「どちらの常識が優れているか」という正義のぶつかり合い(タテの関係のパワーゲーム)を始めてしまうのです。
そして相手を論破して自分の考えに従わせようとするか、あるいは「分かり合えない」と心を閉ざして対戦相手になってしまいます。しかし、アドラー心理学に基づいたチーム・マネジメントにおいて、「考え方や価値観の同質性(意見の一致)」はゴールではありません。 本当に大切なのは、「目標の一致(目的の共有)」です。

ここで、「山登り(登山)」のメタファーを思い浮かべてみてください。夫婦というチームにとって一番重要なのは、「どの山の頂上を目指すのか(目的)」、そして「いつまでに到達したいのか(時間枠)」が合意できていることです。たとえば年末年始の過ごし方で言えば、山頂(共通の目的)は「家族全員が心身ともにリフレッシュし、笑顔と元気をチャージして新しい年を迎えること(ウェルビーイング)」のはずです。この山頂さえブレずに握り合えていれば、そこに至る登山ルート(手段・アプローチ)は違っていて構いません。
険しいけれど最短距離で登る「男坂」が好きな人もいれば、
景色を楽しみながら緩やかに歩く「女坂」を選びたい人もいる。
体力や状況に合わせて「ロープウェイ」を活用したっていいわけです。
「実家に顔を出す」「温泉で骨休めをする」「自宅でのんびり過ごす」というのは、すべて山頂に登るための「ルート(手段)」に過ぎません。手段の違いをめぐって「私のルートが正しい!」「あなたのルートはおかしい!」と争うのは、エネルギーの浪費でしかありません。相手の登り方をリスペクトしつつ、自分の登り方も大切にする。
「山頂が同じなら、途中のプロセスはお互いの持ち味を活かして補い合えばいい」――そう捉え直すことができた瞬間、夫婦関係は「対立」から「協力」へと鮮やかにシフトしていくのです。
戦う(討論)ことを手放し、強調する(対話)ことを選択した時、クリエイティブな発想が生まれることがあります。例えば、「じゃ、今年は、あなたの実家に行った後に、温泉がある宿で一泊するのはどう?」と言った双方が自分の意見をリスペクトしてもらったと感じられる折衷案が生まれるかもしれません。
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